日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
致死量を超える二クロム酸中毒で集学的治療を行った1例
武田 多一園部 藍子樋口 遥水
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2025 年 28 巻 6 号 p. 907-910

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抄録

二クロム酸カリウム中毒で救命された1例を報告する。症例は50歳代の男性。二クロム酸カリウム20gを秤量し内服して自殺を企図し,直後から悪心嘔吐を繰り返していた。内服から約12時間後に当院へ救急車で搬入されたときには意識清明でバイタルサインは安定していた。胃洗浄で赤橙色の胃内容を確認し活性炭と浸透圧性下剤を経管投与した。血液透析を3日間にわたって3回施行し,重金属解毒剤ジメルカプロール,アスコルビン酸,輸液を静脈内投与した。入院経過中に肝障害,腎障害,消化管運動障害,誤嚥性肺炎をみたが保存的に改善し,入院17日目に退院して自宅近くの内科と精神科に紹介となった。二クロム酸カリウムは工業や研究で用いられる強力な酸化剤で,経口摂取すると消化管障害や多臓器不全をきたし死に至ることもある危険な物質である。本症例では致死量を超える量を嚥下していたが,直後の嘔吐や病院での集中治療により多臓器不全増悪や死亡を回避できたと考えられた。クロム酸中毒の事例は多くないので,後学に資するものとして症例報告とした。

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