日本臨床救急医学会雑誌
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総説
急性呼吸不全に対する呼吸管理法の新しい展開
丸川 征四郎切田 学
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2000 年 3 巻 2 号 p. 195-207

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抄録

急性呼吸不全に対する呼吸管理法について,最近の代表的な4つの研究課題を取り上げ解説した。①気管内ガス吹送法(TGI):炭酸ガス呼出を促進する効果によって,陽圧人工呼吸の一回換気量が軽減され気道内圧を低くできるので,人工呼吸による肺損傷を回避する手段として期待される。しかし,患者の生命予後を改善する効果は未確認であり,専用装置も未開発なので,患者や家族の同意と安全が保証できる条件が整わなければ用いるべきではない。②一酸化窒素(NO)吸入療法:欧米の多施設共同研究(成人)で生命予後を改善する効果はないと結論された。しかし,従来の治療に反応しない急性呼吸促迫症候群(ARDS)の低酸素血症改善や新生児遷延性肺高血圧症の改善などへの臨床応用が期待されている。③部分液体換気(PLV):肺胞レベルでの病理学的改善が期待される換気法であるが,臨床検討が少なく今後の臨床評価が期待される。④体位呼吸療法:腹臥位を中心とする体位変換が,ARDSにともなう下側肺障害の治療手段として注目されている。しかし,安全かつ効果的に行う方法は確立されておらず,多施設による臨床治験が望まれる。これら新しい治療法の開発は,単に動脈血血液ガス値の改善だけではなく,肺を保護しつつ病理学的な変化をも治療する呼吸管理の模索と考えられる。

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© 2000 日本臨床救急医学会
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