日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
中毒症状が遅発し再燃を示した有機リン中毒の1例
尾中 敦彦都築 貴樫村 重樹榮 博史当麻 美樹田伏 久之
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キーワード: 有機リン中毒, 遅発, 再燃
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2000 年 3 巻 3 号 p. 363-366

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抄録

スミチオン®服用98時間後に中毒症状が発現し,その後の経過中に症状の再燃がみられた症例を経験した。本例のfenitrothion(以下FNTと略す),およびその代謝産物である3-methyl-4-nitrophenol(以下MNPと略す)の血中濃度を測定し,臨床経過との対比を行ったので報告する。症例は53歳の男性。スミチオン® 100mlをキッチンハイター® 100ml,焼酎300ml,ハルシオン® 8錠とともに服用し,他院で胃洗浄,pyridine-2-aldoxime-methiodine(以下PAMと略す)1gの投与を受け,服用より約12時間後に当センターヘ搬送された。当初は傾眠傾向を認めるのみであった。しかし,第4病日に入り初めて急性中毒症状(唾液分泌尤進,縮瞳,筋力の低下)がみられ,第9病日には再び症状の増悪がみられた。血中FNTおよび3-methyl-4-nitrophenolの血中濃度は,臨床症状の発現に一致した2相性の変化を示した。本例における中毒症状の発現機序は脂肪組織に吸収されたFNTの再分布および再分布したFNTがさらにfenitrooxonへと代謝されたためと思われた。

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© 2000 日本臨床救急医学会
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