救急救命士の誕生により,本邦のプレホスピタル・ケアは新段階を迎えた。救急救命士は年間約1,000名が養成されているものの,配置は都市圏に偏り,地域差が生じていると推測される。本研究では東京都と宇都宮市を取り上げ,救急救命士数と特定行為施行件数,および両地域で蘇生プロトコールを同じくする三次救急医療施設における院外心肺機能停止患者の転帰を比較した。東京都では,救急救命士数と特定行為施行件数が有意に多く,短期生存率が高かった。数量化理論Ⅱ類を用いた重回帰分析とMantel-Haenszelのχ2検定により,短期生存率はbystander CPRと電気的除細動の施行の有無が関与していると考えられた。bystander CPRの施行率は両地域間に差を認めないことより,短期生存率の差には電気的除細動の施行率が関与すると考えられた。したがって,特定行為を行う救急救命士の配置の地域差が短期生存率の差に関与していると考えられた。
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