2000 年 3 巻 4 号 p. 422-427
来院時から急性心不全・肺水腫を伴った大動脈鞍状塞栓症(saddle embolism)の1救命例を報告する。症例は74歳の女性で,以前から心房細動・高血圧症・うっ血性心不全・糖尿病を指摘されていたが,抗血小板薬や抗凝固薬の内服はしていなかった。突然の両下肢の疼痛・冷感・しびれを主訴に発症し搬送されてきた。来院時の胸部X線像で心拡大と肺水腫が認められた。血管造影でsaddle embolismと診断し,Fogartyカテーテルによる血栓摘除術を施行した。術前に急性呼吸不全が進行して気管内挿管を行い,術後は厳密な循環・呼吸管理のためにICUに収容した。再灌流障害の予防として,輸液の負荷と十分な利尿が必須とされるが,急性心不全・肺水腫を併発していたため,不用意な輸液負荷は危険であり,In/Outバランスが負となるように管理した。その結果,再灌流障害は回避され,急性心不全・肺水腫も改善して,第2病日に人工呼吸器から離脱し,第21病日に軽快退院した。