2001 年 4 巻 1 号 p. 30-35
奇異性脳塞栓症によると思われる若年性脳梗塞の2例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例1:28歳,男性,動揺性眩量で発症し来院。CT,MRIで右後下小脳動脈領域に梗塞巣を認めるも脳血管撮影では狭窄・閉塞性病変は認めなかった。経食道心エコー(TEE)で卵円孔開存(PFO)が確認でき,奇異性脳塞栓症(PE)と診断し抗凝固療法剤内服による経過観察とした。症例2:23歳,女性,右上下肢脱力感を認め来院。CTにて左シルヴィウス裂内の点状高吸収域像を認め,脳塞栓を疑い脳血管撮影を施行した。左中大脳動脈閉塞を確認し,選択的血栓溶解療法により再開通を得た。TEEではPFOを認めPEと診断し,血小板凝集抑制剤内服による経過観察とした。原因不明の若年性脳梗塞ではPFOによるPEの可能性を考慮し,TEEを用いて積極的にPFOの有無を検索することが肝要である。一方,PEに対する治療法については,再発予防のために治療薬の選択,薬剤投与期間などについて個々の症例に応じて検討が必要と思われた。