2001 年 4 巻 3 号 p. 320-324
臨床上,比較的まれとされる石灰硫黄合剤服用による急性中毒の1救命例を経験した。症例は50歳女性。平成■年■月■日18時ごろ農薬約100mlを服用し,首を吊った。その直後,家人に発見され,18時30分に当救命救急センターに搬入された。来院時意識レベルI-3(JCS)で自発呼吸あり。血圧,脈拍に異常はなく,心肺打聴診上異常なし。腹部圧痛,腹膜刺激症状なし。ただちに胃洗浄を行ったところ,強い硫黄臭を認めた。農薬は石灰硫黄合剤と判明し,胃内で発生した硫化水素ガスの吸入防止のため気管内挿管を施行した。その後,臓器障害を認めず,第3病日に抜管し,第10病日には退院となった。本剤は内服することにより胃酸と反応し,発生した硫化水素がチトクロームオキシダーゼ活性を阻害して細胞機能を低下させる。そのため本剤内服の場合,積極的に気管内挿管を行うことが必要と考えられた。