2001 年 4 巻 3 号 p. 316-319
多発性囊胞腎で血液透析中の56歳の男性が下腹部痛を主訴に受診。CT上,骨盤腔に血管外漏出像を伴う径8cm大の血腫があり,出血性ショックを来したため,血管造影を施行した。下腸間膜動脈の分枝,上腸間膜動脈根部,右肝動脈に動脈瘤を認めたことより,多発性腹部内臓動脈瘤,そのうちの下腸間膜動脈瘤破裂と診断した。緊急手術で出血している小動脈を結紮し,止血し得た。なお,S状結腸の色調は良好で腸切除は行わなかった。腹部内臓動脈瘤は比較的まれな疾患であり,また,多発例も知られている。下腸間膜動脈瘤はそのなかでもっとも頻度が低く,多発性囊胞腎に下腸間膜動脈瘤破裂を合併した例は検索した限りでは初めてであり,成因としては血管の脆弱性が関与していると思われた。原因不明のショックに伴う腹腔内出血や,腸間膜血腫が疑われる場合は本症を念頭におき,積極的に下腸間膜動脈造影を含めた血管造影を行うべきであろう。