2001 年 4 巻 5 号 p. 501-505
救急隊員・救急救命士がプレホスピタルケアにおいて救急車車載心電図モニターで急性冠症候群を観察する場合,ST変化をとらえることが困難なことが多い。今回,近似肢誘導ではST変化は認められなかったが,変形胸部誘導(MCL)法を施行することにより,明らかなST変化が認められた急性心筋梗塞4症例を経験した。症例1,2は急性心筋梗塞の診断後に転院搬送となった症例で,症例3,4は救急現場で救急救命士がMCL法を施行し急性冠症候群を疑い,専門治療施設の選定を行い搬送した症例である。従来からの近似肢誘導法にMCL法を併用することにより,プレホスピタルケアにおいてさらに詳細なモニター観察を行うことが可能となり,病院選定に難渋する地方都市において急性冠症候群症例の予後向上に寄与し得ると思われる。