日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
症例報告
催涙ガススプレー噴射による集団患者発生の経験
葛本 雅之横瀬 喜彦斎藤 学井ノ上 博也杉本 靖西川 徹高橋 精一笹内 信行桜井 尚子桜井 立良
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 5 巻 1 号 p. 70-74

詳細
抄録

屋内での催涙ガススプレー噴射により集団患者が発生した事例を経験したので報告する。被害者は約50名で,そのうち症状の強い8名が事件発生から約30分後に当院に搬入された。症例は男子3例,女子5例,年齢は15~16歳。症状は,眼痛,咽頭痛,咳嗽,嘔気,頭痛,過換気,呼吸困難,顔面紅斑などであり,呼吸性アルカローシス,低酸素血症,自血球増多などの異常値を示す例もあった。事件現場からの通報後,直ちに催涙ガスの成分分析と毒性に関する情報提供を奈良県警察本部科学捜査研究所と日本中毒情報センターに依頼した。ガス成分は1時間後,診療開始30分後にカプサイシンであることが判明した。救急処置は,結膜洗浄,肝庇護薬点滴静注などの対症療法を行うとともに,患者の精神的動揺に対するケアも必要であった。いずれの症例も翌朝には軽快した。集団災害の観点からみた場合,救急医療を行うにあたり関係各機関との連携が重要と考えられた。

著者関連情報
© 2002 日本臨床救急医学会
前の記事
feedback
Top