日本臨床救急医学会雑誌
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原著
救急患者収容所要時間と救命率の関係
橋本 孝来栗原 正紀井上 健―郎岩崎 義博藤本 昭
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2002 年 5 巻 3 号 p. 285-292

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抄録

救急患者の救命率を左右する因子の一つとして,収容までの所要時間が挙げられる。長崎地区において運用されている救急事務引継書を用いて,救急患者収容所要時間と2週間後の救命率(以下,救命率と記す)の関係を検討した。対象は平成9年9月1日から平成13年6月30日までの3年10か月の期間で,実態調査が可能であった42,838件のうち,死亡者数が100人以上の疾患とした。その結果,脳出血,くも膜下出血,急性心筋梗塞,急性心不全,肺炎,CPAでは収容所要時間と救命率の間にある程度の傾向が認められた。一方,脳梗塞では収容所要時間と救命率の間に明らかな傾向は見出せなかった。また,道路整備により収容所要時間が40分から10分に短縮されるモデルを設定して,各々の疾患別救命率の差から試算を行ったところ,これらの疾患に限っても人口1万人当たり年間1.84人が救命できると予想された。地域救急医療体制を考えるうえで今後,考慮されるべき観点である。

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© 2002 日本臨床救急医学会
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