2003 年 6 巻 3 号 p. 324-329
救急車搬送の実態を調査し,要請する基準に関して検討した。7か月間に当院救急医療センターに救急車で搬送された489例を対象とした。救急隊長と医師が各搬送の適応や理由などを記入し,要請基準の較差を明らかにすべく検討した。医師は対象の48%を,救急隊は対象の28%を搬送適応なしと判断しており,市民・救急隊・医師の間では救急車要請の基準に差が認められた。医師の判断を基準にすると,一般外傷が搬送適応なしと判断される割合が疾病や交通外傷に比べ高い値で,一般外傷の現場では搬送を救急車に依存する傾向にあると思われた。市民が救急車を要請する基準はなく,市民の間でも較差が大きい。救急車の適切な利用のためには救急隊の法律的擁護や,市民の啓発,救急医療への理解が重要である。