1998年から56か月間に当科に搬送された心肺停止710例のうち,病着前にPEAを生じた176例(24.8%)について観察処置の適否と問題点を前向きに調査した。また消防職員541名にアンケートを行い,PEAの認識度を調査し,教育における問題点を検討した。結果,全体では17%でPEAが認識されておらず,現場で生命徴候があった場合には約半数で見過ごしが生じていた。モニタリングの不適切な評価,下顎呼吸の誤った認識が原因と思われた。救急救命士が搭乗していないと有意に見過ごしが多かったが,搭乗していても見過ごしがあった。PEAは心電図では正常洞調律波形の場合もあること,「脈」という曖味な用語ではなく動脈拍動である「脈拍数」と心電図の「心拍数」を明確に区別すべきこと,下顎呼吸は有効換気ではないこと,CPRは動脈拍動のほか意識レベルや呼吸などを総合的に判断して開始すべきことを,教育において強調する必要があると思われた。