日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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7 巻, 4 号
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原著
  • 一救急搬送の現状調査とアンケート調査をもとに一
    金子 直之, 岡田 芳明, 町田 祐康, 大河原 治平, 河合 亜留士, 石川 充孝, 齋藤 大蔵, 高須 朗, 阪本 敏久
    原稿種別: 原著
    2004 年 7 巻 4 号 p. 317-327
    発行日: 2004/08/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    1998年から56か月間に当科に搬送された心肺停止710例のうち,病着前にPEAを生じた176例(24.8%)について観察処置の適否と問題点を前向きに調査した。また消防職員541名にアンケートを行い,PEAの認識度を調査し,教育における問題点を検討した。結果,全体では17%でPEAが認識されておらず,現場で生命徴候があった場合には約半数で見過ごしが生じていた。モニタリングの不適切な評価,下顎呼吸の誤った認識が原因と思われた。救急救命士が搭乗していないと有意に見過ごしが多かったが,搭乗していても見過ごしがあった。PEAは心電図では正常洞調律波形の場合もあること,「脈」という曖味な用語ではなく動脈拍動である「脈拍数」と心電図の「心拍数」を明確に区別すべきこと,下顎呼吸は有効換気ではないこと,CPRは動脈拍動のほか意識レベルや呼吸などを総合的に判断して開始すべきことを,教育において強調する必要があると思われた。

臨床経験
  • 阿部 幸喜, 豊田 泉, 岡田 眞人, 早野 大輔, 森川 健太郎, 淺井 精一, 山口 孝治, 杉本 勝彦
    原稿種別: 臨床経験
    2004 年 7 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 2004/08/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    平成11年度4月から始動した静岡県西部ドクターヘリ体制は,平成15年4月で5年目を迎かえ,平成15年3月末で累計1,533件の出動を行った。その約75%は消防機関の要請に運動した救急出動で,病院間搬送は10%以下であった。交通事故出動件数は274件あり,この中で,医師・看護師が直接,交通事故現場に出動し,初期評価・緊急処置を開始した事例を53件経験した。交通事故現場に医師・看護師が出動し,先着の救急隊とともに救急現場活動を行うことにより,事故現場にて傷病者のトリアージと外傷のprimary surveyおよび緊急蘇生処置を行うことが可能となった。今後,医師・看護師も現場出動をより効果的にするため,消防指令室とヘリ通信センターとのより緊密な連携を図るとともに,合同救助訓練の実施などにより,消防機関と医療機関との相互理解を深める必要がある。

症例・事例報告
  • 三木 重樹, 田中 孝也, 北澤 康秀, 弘津 喜史, 武山 直志, 中谷 壽男
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 4 号 p. 334-338
    発行日: 2004/08/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    P-ANCA抗体価の漸減中に肺病変の再燃を認めた顕微鏡的多発血管炎の1例を経験したので報告する。症例は76歳の女性。数日間続く下痢および呼吸困難を主訴に紹介入院した。入院時胸部画像所見で両肺野に浸潤影を認め,肺炎の診断のもとに抗生剤投与を開始したが改善せず。尿蛋白・尿潜血陽性,P-ANCA抗体価高値および胸部X線像より顕微鏡的多発血管炎(以下MPA)と診断した。ステロイドによる免疫抑制療法を開始したがステロイド漸減時に血管炎の再燃と思われる間質性肺炎/肺線維症を認めた。今回P-ANCAをマーカーにステロイドの減量を行ったが,P-ANCAが低下傾向にあるにもかかわらず再燃をみた。再燃前に血小板数,CRP,FDPなどが変動し,再燃時にはKL-6,ヒアルロン酸が上昇した。MPAの管理においてはP-ANCAのみならず,種々の炎症性のパラメーターを総合的に評価し,再燃の予測に細心の注意を払う必要がある。

  • 江口 哲, 最所 純平, 坂本 照夫
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 4 号 p. 339-343
    発行日: 2004/08/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    喘息発作に起因する呼気障害出現時に,呼気を補助することで次の吸気を可能にし,窒息による低酸素血症を予防,あるいは改善することを目的とする呼吸介助法に,胸郭外胸部圧迫法がある。今回,喘息発作により心肺停止状態に陥った傷病者に胸郭外胸部圧迫法を施し,社会復帰した症例を経験した。本症例では,心肺蘇生法を開始したものの,バッグバルブマスクによる換気抵抗が強く陽圧換気不能であったことから,呼気を促す目的で胸郭外胸部圧迫法を施したところ,明らかに換気抵抗の軽減が感じられ,数回の胸郭圧迫とバッグバルブマスク換気の併用のみで心拍再開が認められた。喘息発作で起こる心停止は,低酸素血症による心筋虚血が主な原因であるが,気道の狭窄により呼気が障害されることで胸腔内圧が著明に上昇し,心臓と大静脈が過膨張した肺に圧迫され,静脈還流が減少し心拍出量が低下する閉塞性ショックも原因の一つになりえると考えられた。

  • 井上 文隆, 星田 徹, 今西 正巳, 橋本 俊雄, 宗川 義嗣, 斎藤 能彦
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 4 号 p. 344-350
    発行日: 2004/08/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    背景:健常成人発症のサルモネラ菌感染症は大部分が一過性の胃腸炎を示すのみであり,重篤な基礎疾患がない限り敗血症など重症化を示すことはまれである。今回,われわれは健常成人にもかかわらずサルモネラ腸炎から多臓器不全を示したが,血液浄化などの集中治療により救命し得た1例を経験した。症例:症例は59歳,男性。既往歴は特記事項なし。平成■年■月■日から頻回の下痢が出現した。■月■日に近医を受診し,急性腎不全および下痢を示したため溶血性尿毒症症候群が疑われ同日当センターに紹介された。来院時の血液検査では,肝不全,腎不全,高CK血症,高CRPなどを示した。入院後の下痢便は緑色便であり,便中Vero毒素は陰性であった。入院直後から持続的血液濾過透析および血漿交換を施行した。便培養からサルモネラ菌(S. enteritidis)が検出され,第8病日の血中サルモネラ抗体価は320倍であり陽性を示した(搬入時は40倍未満)。以上から,本症例はサルモネラ菌感染による多臓器不全と考えられた。治療として抗生剤などの薬物治療,および血液浄化(血漿交換2回,持続的血液濾過透析13日間,血液透析2回)を施行した。また,第20病日には成人呼吸促迫症候群を示したが,ステロイドパルス療法が有効であった。第34病日には血液透析から離脱し,第39病日に退院した。結語:サルモネラ菌感染症により多臓器不全,成人呼吸促迫症候群を発症したが,血液浄化療法を中心とした集中治療で救命し得た症例を経験した。

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