2005 年 8 巻 1 号 p. 1-5
症例1は75歳女性。うっ血性心不全と肺炎の診断で近医入院加療中に塩酸アマンタジンによりTorsades de pointes(TdP)をきたした。症例2は86歳女性。心房細動のためコハク酸シベンゾリンを内服していた。意識消失発作で当院救急外来に搬送され,TdPが認められた。症例3は慢性腎不全で血液透析が行われていた64歳の男性。発作性心房細動にプロカインアミドが投薬されたの ちQT間隔が延長し,TdPが出現した。抗不整脈薬や向精神薬をはじめとする薬物によりQT延長が生じることが知られている。QT延長症候群はTdPを引き起こし,失神や心臓急死の原因となる。本報告の3例はいずれも腎機能低下例であり,常用量でも血中薬物濃度が高くなりQT延長が惹起されたと考えられる。とくに腎機能低下例や人工透析患者への抗不整脈薬や向精神薬などの使用には,投与量の点検と心電図の定期チェックが必要である。