2005 年 8 巻 3 号 p. 207-214
中規模都市における救急搬送時間の実態を把握することと,搬送時間の短縮のための行政施策を探ることを目的として,新たな高次救急医療機関(以下新設病院)が中規模都市に設置された場合の市内外搬送割合と搬送時間短縮の効果を検討した。その結果,中規模都市における搬送時間は大都市より長いことがわかった。その要因として市外搬送の割合が高く,その搬送理由として「掛かりつけ」,「患者指定」が多いことがわかった。新設病院の設置を想定した分析では,新設病院を掛かりつけにした場合,大都市の搬送時間と変わらないことがわかった。また,市外搬送率は42.1%→17.5%,平均搬送時間は,12.4分→6.8分と5.6分短縮され,大幅な改善がみられた。これらの結果より,搬送時間を短縮するためには,高次救急医療機関がない中規模都市では,24時間対応の高次救急医療機関の新設による効果が大きいことが判明した。