抄録
本稿では,生活や社会の中で「活用されている音楽」の役割を理解するために必要な教材選択と授業構成の視点を整理した.具体的には,教材選択の視点として〈音楽が効果的に活用されている場面・事象〉〈生徒にとっての生活や社会の中にある場面・事象〉〈生徒が意識を向けやすい時期にある場面・事象〉の3点,授業構成の視点として〈音楽そのものの特徴を捉える学習場面〉〈音楽の役割について考える学習場面〉〈視点を変えて音楽の役割について考える学習場面〉〈学んだことを活用する学習場面〉の4点を示した.さらに,これらの視点に基づいてフィギュアスケートを教材とした実践を開発し,実践の成果と課題を検証した.視点を指標に教材を選択し,授業構成を考えることによって,学習課題が緊密に関連した.その結果,生徒は音楽の特徴を土台にしつつ,2つの視点(観客,選手)をもち合わせながら音楽の役割について探究していったことが明らかになった.