抄録
本研究では,学習者の道徳体験を基盤とした道徳科授業に関する研究の動向を整理し,「自己を見つめる」学習の充実に向けた研究課題を明らかにすることを目的とした.国立情報学研究所によるデータベースである「CiNii Research」と国立研究開発法人科学技術振興機構による電子ジャーナルサイト「J-STAGE」にて論文を検索し,38 論文を抽出した.レビューの結果,次の3点の研究課題が明らかになった.①学習者の体験や経験を活用するという理念と,授業による学習成果とが乖離している要因の分析,②学習者の体験や経験,「そのときの感じ方,考え方」の内省を促すための理論の構築,③「自分の生活」を振り返ることを通し,「これからの課題や目標」を設定できることの効果検証,である.今後は,本研究の結果を基に,「道徳的実践」に繋がる道徳科授業の在り方を考えていく必要がある.