2023 年 36 巻 1 号 p. 49-55
膀胱尿管逆流に対する手術は開放手術が主流であった. 手術方法としては膀胱内操作を中心に修復する方法 (Politano-Leadbetter法, Cohen法) と膀胱外操作だけで修復する方法 (Lich-Gregoir法) などがある. 成績はgrade IVまでは98%以上の成功が得られているが, grade Vでは80%程度と低くなる. このようにどの術式も優れた結果を示すが, それぞれに特有の欠点がある. Politano-Leadbetter法は膀胱後面の操作で周辺臓器を障害するリスクがある. Cohen法は膀胱内で尿管口が正反対になるという大きな欠点がある. Lich-Gregoir法は両側例の場合に術後尿閉を来たす場合がある.
Lich-Gregoir法による逆流防止術は, 開放手術で開発されたureteral advancementのテクニックがそのまま腹腔鏡下手術やロボット支援手術に適用されているため, 術後治癒率は開放手術と同等の結果が報告されている. 開放手術と同様に膀胱外アプローチであるため, 術後血尿や膀胱刺激症状は軽微である. 腹腔鏡下手術では拡大視野での操作が可能で, 骨盤神経叢から膀胱壁に向かって走行する神経枝を把握しやすいため, 開腹手術に比べて術後尿閉などの発生率が低い. ロボット支援手術では高解像度3D画像の利用により骨盤神経叢の尿管枝を含めた全体像を三次元的に視認できるため, 術後の排尿障害を低減できることが期待されている.