Japanese Journal of Endourology and Robotics
Online ISSN : 2436-875X
特集3 : hinotoriTM臨床について
序文
三宅 秀明羽渕 友則
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2024 年 37 巻 1 号 p. 49

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抄録

 手術支援ロボットの普及は目覚ましく, 瞬く間に泌尿器科領域を中心に外科手術を席巻しつつあると言っても過言ではない. 振り返ってみれば, 米国で1999年にda Vinciの販売が開始され, 翌2000年にはFDAの認可を得て, 前立腺全摘除術を皮切りに様々な術式にロボット支援手術が適応され始めた. 本邦でも2006年から前立腺全摘除術がロボット支援下に施行され, 2009年にはda Vinci Sが医療機器としての薬事承認を受け, 2012年にはロボット支援前立腺全摘除術が保険収載された. その後, 2016年に小径腎癌に対するロボット支援腎部分切除術が, さらに2018年に12術式, 2020年に7術式, 2022年に8術式が新たに保険適応となり, 泌尿器科領域のみならず外科, 婦人科領域においても本格的なロボット支援手術の時代を迎えている. この間, 我が国は米国に次ぐ世界第2位の手術支援ロボット保有国となり, この10年間にロボット支援手術件数は約10倍に増加している. 高解像度の拡大3D立体画像を見ながら多関節鉗子を自由に操ることで繊細な操作を可能とする手術支援ロボットの優れた特性を考慮すれば, これらの傾向はさらに加速し, 今後の外科手術においては, ロボット支援手術が中心的役割を果たしていくことは想像に難くない.

 しかし, その一方で手術支援ロボットのグローバル市場は, 既存機種であるda Vinciの独占状態が長く続いていた. そのような状況の中, 2013年に川崎重工業とシスメックスの共同出資により株式会社メディカロイド設立され, 2015年に国産手術支援ロボットの開発がスタートした. 開発は紆余曲折を経たものの順調に進み, 僅か5年後の2020年に初の国産手術支援ロボットであるhinotoriの製造販売承認が取得された. また, 同年暮れにhinotoriを用いた第一例目の手術として前立腺全摘除術が施行され無事終了した. その後, hinotoriは泌尿器科領域を中心に本邦のロボット支援手術に徐々に浸透し, 本稿執筆時点で40台以上が稼働しており, 複数の術式において既存機種と同等の成績が得られるとの結果も既に報告されている. また, ここ数年でhinotori以外にも複数の新たな手術支援ロボットの使用が開始され, まさに手術支援ロボットの群雄割拠の時代が始まった感があるが, それぞれの機種の特徴が上手く活用され共存, 発展することが望まれることは言う間でもない.

 本特集では, hinotoriの使用に豊富な実績を有する5人のエキスパートの先生方に, 様々な視点からhinotoriを使用したロボット支援手術の実際を詳細に解説いただいている. 読者諸氏に初の国産手術支援ロボットであるhinotoriの特徴をより身近に感じていただき, hinotoriに対する関心と期待を高めていただけたなら, 本特集の目的が達せられたということであり, 編集者としては望外の喜びである.

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© 2024 一般社団法人 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
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