日本食品工学会誌
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原著論文
塩漬された豚肉におけるタンパク質の熱変性速度論
梶谷 志乃福岡 美香酒井 昇
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2011 年 12 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

DSC法を用いて,異なるNaCl濃度をもった豚肉筋原繊維タンパク質の熱変性について解析した.ミオシン,コラーゲン,アクチンに対応する3つの吸熱ピークが塩漬の影響を受け,豚肉中のNaCl量増加に伴って,アクチンの変性がより低温で生じた.さらに,NaCl濃度が20 mg/gを超えると,ミオシンの吸熱ピークは消失した.
DSCダイナミック法によって,3つのタンパク質の加熱変性速度解析を行った.NaCl濃度が高くなるにしたがって各タンパク質の変性速度は増加した.とくに,アクチンの速度定数は著しく増加して,70℃における速度定数は0.1 min−1(NaCl 2 mg/g)から1.75 min−1(NaCl 40 mg/g)に増加した.
また,この時DSC測定から得られる塩分濃度の異なる各タンパク質の活性化エネルギーの平均値(Myosin:2.41×102 kJ/mol,Sarcoplasmic proteins and collagen:3.26×102 kJ/mol,Actin:2.50×102 kJ/mol)を用いることで,頻度因子を塩分濃度の指数関数とした経験式で表すことができた.これらアレニウスの式における活性化エネルギーおよび頻度因子の塩濃度依存性より,塩分濃度および昇温速度変化に応じた豚肉タンパク質の加熱変性速度定数を得ることを可能とした.

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© 2011 一般社団法人 日本食品工学会
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