日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
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12 巻, 1 号
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解説
  • 今村 維克
    2011 年 12 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    糖などの炭水化物からなるアモルファス材料は高い吸湿性を有しており,収着した水は材料の物理化学的特性に少なからず影響を及ぼす.これまでに,糖類からなるアモルファスマトリクスの水分収着特性に関して多くの研究がなされてきた.しかし,それら既往の研究のほとんどは,暗に全ての収着水分子は単一の収着状態にあるという前提に基づいている:アモルファス状態では分子はランダムな配向でランダムに位置しており,水分収着状態も複数以上存在するものと考えられる.近年,著者等はFourier変換赤外分光分析とFourier self-deconvolution処理を組み合わせることにより,収着水を異なる状態ごとに分離・定量した.その結果,収着水には5つの収着状態が存在し,その内の3つの状態の収着水が“ガラス転移温度の低下”を引き起こしており,残りの2つの収着水はマトリクスの物理化学的特性にはほとんど影響しないことを明らかにした.
原著論文
  • 安斎 真由美, 渡辺 学, 鈴木 徹
    2011 年 12 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,コーンスターチ-二糖混合アモルファスの水分収着性と二糖類の結晶化について検討を行った.コーンスターチに二糖(スクロース,ラクトース,トレハロース)を添加した凍結乾燥アモルファスコーンスターチ試料の25℃における水分収着等温線を簡易デシゲータ法を用いて測定し,二元収着モデル式にて解析を行った.各試料の結晶性の確認は,X線回折測定を用いて行った.また,ガラス転移温度(Tg)は,示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した.凍結乾燥コーンスターチ試料と比較して単分子層収着が飽和したときの収着量を示すC’Hは,二糖の存在により低下した.とくに,スクロースの場合に,C’Hが最も小さい値を示した.一方で,高awの領域(aw≧0.75)では,スクロースが最も高い水分収着性を示した.また,X線回折測定の結果,aw=0.75において,コーンスターチ中のラクトースとトレハロースでは,結晶化が起きていた.
  • 梶谷 志乃, 福岡 美香, 酒井 昇
    2011 年 12 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    DSC法を用いて,異なるNaCl濃度をもった豚肉筋原繊維タンパク質の熱変性について解析した.ミオシン,コラーゲン,アクチンに対応する3つの吸熱ピークが塩漬の影響を受け,豚肉中のNaCl量増加に伴って,アクチンの変性がより低温で生じた.さらに,NaCl濃度が20 mg/gを超えると,ミオシンの吸熱ピークは消失した.
    DSCダイナミック法によって,3つのタンパク質の加熱変性速度解析を行った.NaCl濃度が高くなるにしたがって各タンパク質の変性速度は増加した.とくに,アクチンの速度定数は著しく増加して,70℃における速度定数は0.1 min−1(NaCl 2 mg/g)から1.75 min−1(NaCl 40 mg/g)に増加した.
    また,この時DSC測定から得られる塩分濃度の異なる各タンパク質の活性化エネルギーの平均値(Myosin:2.41×102 kJ/mol,Sarcoplasmic proteins and collagen:3.26×102 kJ/mol,Actin:2.50×102 kJ/mol)を用いることで,頻度因子を塩分濃度の指数関数とした経験式で表すことができた.これらアレニウスの式における活性化エネルギーおよび頻度因子の塩濃度依存性より,塩分濃度および昇温速度変化に応じた豚肉タンパク質の加熱変性速度定数を得ることを可能とした.
技術論文
ノート
  • Akiko ISA, Yoshio HAGURA, Kanichi SUZUKI
    2011 年 12 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2015/06/18
    ジャーナル フリー
    This study aimed to investigate the carbonization rate and energy for carbonization of granular waste biomass by superheated steam (SHS) treatment combined with far-infrared heating (FIH) (SHS+FIH). Cooked and dried rice grains were used as a sample. Carbonization temperatures ranging from 503 to 578K were adjusted by combining SHS temperatures with FIH temperatures. Carbonization rate determined by changes of sample weight during carbonization treatment depended on the carbonization temperature and obeyed the Arrhenius equation. The energy requirement per unit mass of carbonized product, Qc, decreased as carbonization temperature increased. In the combined treatment of SHS+FIH, the apparatus heated easily and rapidly to the carbonization temperature only when 1/6~1/7 of heat flow (thermal energy rate) to generate SHS was supplied to the FIH heater, and the warm-up time of the apparatus decreased to about half that of the treatment with SHS alone. Results of the increase in productivity of the carbonized product and decrease in carbonization energy as carbonization temperature increased confirmed the energetic advantages of the combined treatment of SHS+FIH. At carbonization temperatures higher than 623K, it is estimated that the combustion heat of the carbonized product would be several times higher than the carbonization energy.
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