日本食品工学会誌
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解説
果実香気成分の高付加価値利用
飛塚 幸喜宮脇 長人小林 康弘佐藤 文隆
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2011 年 12 巻 4 号 p. 131-136

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抄録
様々な果実から香気成分を採取し,これを香料素材として活用することを目指して研究を行った.香気成分には熱に不安定なものも多いため,非可熱操作である膜分離および凍結濃縮,とくに界面前進凍結濃縮法に着目して種々の検討を行った。
西洋ナシ(ラ・フランス),モモおよびリンゴ果実から蒸留などにより香気成分水溶液を採取し,これを界面前進凍結濃縮(約11倍濃縮)したところ,多くの香気成分の回収率が9割前後となり極めて効率よく濃縮できることがわかった.また,同じ試料を逆浸透膜濾過濃縮したところ,多くの香気成分で溶質阻止率が80から90%前後となり,同様に効率よく濃縮できた.香気成分水溶液(果汁を減圧蒸留して得られる凝縮水)の浸透圧を測定したところ,ラ・フランス果実では果汁の約43分の1,モモ果実では果汁の約18分の1と小さかった.香気成分水溶液の浸透圧が低いため,香気成分が効率よく濃縮されたものと考えられた.
これらの技術を応用して採取したラ・フランス果実香気成分を原料とした新しい香料を開発した.開発香料に対する食品メーカーや消費者の評価は高く,これを活用した食品や飲料などが既に商品化されている.
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© 2011 一般社団法人 日本食品工学会
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