日本食品工学会誌
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原著論文
極低温ミクロトームイメージングシステムによる冷凍食品内のミクロからマクロ気泡計測
都 甲洙佐瀬 勘紀裵 英煥前田 竜郎上野 茂昭荒木 徹也
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2017 年 18 巻 3 号 p. 125-132

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抄録

アイスクリームは,気泡,氷結晶,その他の乳製品などにより構成され,気泡の含有率をオーバーラン(Overrun: OR)という.気泡は,フリージングにより生成され,アイスクリームのテクスチャーに大きな影響与える.

OR値は,同一体積におけるアイスクリームミックスとアイスクリームの重量の比で精度よく算出されるが,同じORの値であっても,気泡大きさとその分布は最終品質に影響を与える.気泡は光学顕微鏡,SEM,X線CT,MRIなどにより計測されるが,これらは,装置毎に計測範囲および空間分解能が異なり,試料のミクロからマクロ構造の計測が困難である.本研究の目的は,アイスクリームのテクスチャーを解明するために,極低温ミクロトームイメージングシステム(Cryogenic Microtome Imaging System, CMtSIS)により,アイスクリーム内のミクロからマクロ気泡を計測することにある.

供試試料は,市販のソフトアイスクリームを用いた.CMtSISは,試料を切削するミクロトーム部,自動XYステージ,切断面画像の取り込み部で構成される.異なる計測範囲は,対物レンズ10倍,20倍,50倍における連続2次元断面画像をそれぞれ取得した.また,XYステージの自動位置決めは,計測範囲194×154μmに相当する50倍の対物レンズを用い,横軸移動量194μmで5回,縦軸移動量154μmで5回ずつ行い,同一断面から25枚の画像を取得・結合した.気泡形状は,面積,長軸,短軸を計測し,気泡の面積に相当する円直径を算出した.

相当円直径の平均は,10倍,20倍,50倍それぞれ34.2μm,17.9μm,8.0μmで,50倍では10μm以下が75.2%,20倍では10~30μmが71.8%,10倍では30μm以上が54.9%であった.これらは同じ試料にも関わらず計測範囲の違いにより,その値が異なった.自動位置きめにより得られた25枚の結合画像から識別された気泡は322個で,長軸の最大が277.5μm,最小が0.8μm,平均が28.2μmであった.相当円直径の最大が231.2μm,最小が0.6μm,平均が21.1μmであった.統合した画像の大きさは970×770μmで,アイスクリーム内の最大気泡(長軸277.5μm)が3個ほど計測可能な範囲である.この計測範囲(広範囲)において,ミクロ(0.8μm)からマクロ(277.8μm)までの気泡計測が可能になった.

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© 2017 一般社団法人 日本食品工学会
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