日本食品工学会誌
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原著論文
近赤外分光法を用いた乾燥過程における牛肉表面の含水率推定手法と水分活性モニタリングへの応用
石川 大太郎上野 源次郎藤井 智幸
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2017 年 18 巻 3 号 p. 135-143

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抄録

熟成肉は,表面で発酵微生物が増殖することから,牛肉表面の水分活性制御が可能となれば品質管理の有効な手段となる.本研究では,乾燥過程での牛肉表面の水分活性の非破壊推定手法の提案をめざし,近赤外分光法によるモニタリングを実施した.まず,約2~4 mm厚のスライスサンプルの含水率,水分活性と近赤外スペクトルの測定を実施した.920-970 nm付近の近赤外スペクトルの二次微分を用いることで含水率がR2=0.81,RMSE=0.34 g/g-d.s.の精度で予測可能となった.また水分活性と含水率の関係はGAB式でよくフィットされ,水分活性が近赤外スペクトルを用いて間接的に推定可能となった.サンプル表面部分のデータ取得を行うため厚みが2~10 mm程度まで異なるサンプルの測定から,最適な測定距離:サンプルから10 mm,積算時間:100 msを実験的に決定した.最終的に室温4℃,湿度0.8の庫内で乾燥させた牛肉ブロックの乾燥過程における近赤外スペクトルを最適条件下で取得し,スライスサンプルから作成したモデルを適用することで,表面水分活性の予測値を算出した.その結果水分活性の予測値は直線的に減少し約22~25日の後に0.8に達すると推定された.本研究によって牛肉表面の非破壊的な水分活性モニタリング手法確立の可能性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本食品工学会
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