日本食品工学会誌
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原著論文
凍結解凍処理による吸水大豆の組織破壊によるγ-アミノ酪酸生成
上野 茂昭猪龍 夏子笹尾 翔士劉 修銘厚沢 季美江金子 康子島田 玲子
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2019 年 20 巻 2 号 p. 41-49

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抄録

細胞性食素材は凍結により膜構造が破壊され,食品の品質を劣化することがある.われわれは,高圧処理を施した吸水大豆を保存することにより,大豆中にγ-アミノ酪酸が高濃度に蓄積可能であることを明らかにしてきた.これは高圧処理による膜構造破壊が,大豆中の特定の酵素反応を促進したためと考えられている.本研究では,膜構造を破壊可能な凍結解凍処理によっても,大豆中にγ-アミノ酪酸が高濃度に蓄積可能であるかを実験的に明らかにすることを目的とした.凍結解凍処理を施した吸水大豆の内部構造を誘電特性計測および電子顕微鏡で評価し,保存後のγ-アミノ酪酸およびpHを測定した.その結果,高圧処理による大豆内部構造の破壊によって,γ-アミノ酪酸濃度が増加したことが示唆された.また,このγ-アミノ酪酸の増加は,大豆内のpHが低下しγ-アミノ酪酸生成酵素の至適pHに近づいたことにより,みかけの酵素活性が増加したことによるものと推察された.

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© 2019 一般社団法人 日本食品工学会
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