日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
20 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
解説
  • 福岡 美香
    2019 年 20 巻 2 号 p. 23-33
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    食品製造プロセスにおける水分移動と反応の解析として,澱粉食品の糊化挙動ならびに加熱調理における水分移動について,また畜肉,魚介類といったタンパク質を主成分とする畜肉・魚肉の加熱変性の速度解析について解説した.炊飯,麺といった澱粉食品の加熱調理は,熱移動,水分移動とともに,澱粉の糊化反応が同時進行する,極めて複雑な系である.調理の過程において米や麺の表層部では水が十分供給されるために糊化反応は速やかに進行する.他方,内部では,水分移動が遅く,糊化反応が遅れることから,全体が可食となるまでに長い時間を要する.これに対して,澱粉糊化反応の速度自体は律速要因ではないこと,糊化反応が温度と含水率によって決まる平衡値をもつこと,糊化の平衡値に依存した保水能力によって水分移動が支配されることを示し,この現象を記述するための水分移動方程式について説明した.また,澱粉食品の茹で調理時間短縮に向けて,水分移動のメカニズムに基づいた解決策を紹介した.タンパク質の加熱変性速度解析では,加熱による変性の進行に従って,水分保持量,力学物性へ与える影響を示した.

原著論文
  • 酒井 孝, 幸田 理恵, 新海 陽介, 大楠 秀樹
    2019 年 20 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    パスタが押し出される時に,パスタの押出し用ダイスは様々な方向にいくつかの応力を受ける.この応力を定量的にかつ正確に見積もることができれば,パスタダイスと押出しマシンの設計において役立つ.このような背景のもとで,塑性加工シミュレーションソフト・DEFORM-3Dを用いて,応力の定量評価とパスタ流れの可視化を行った.その結果,(1)パスタの変形抵抗式をσ=0.033 MPaと見積もった.(2)ダイスの応力分布を定量的に評価したところ,ダイスの縁で最大σeq=18.3 MPaであることがわかった.(3)コンテナ内のパスタ流れを明確に可視化した.(4)パスタダイスの異なる穴で流速が異なることを明らかにした.

  • 上野 茂昭, 猪龍 夏子, 笹尾 翔士, 劉 修銘, 厚沢 季美江, 金子 康子, 島田 玲子
    2019 年 20 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    細胞性食素材は凍結により膜構造が破壊され,食品の品質を劣化することがある.われわれは,高圧処理を施した吸水大豆を保存することにより,大豆中にγ-アミノ酪酸が高濃度に蓄積可能であることを明らかにしてきた.これは高圧処理による膜構造破壊が,大豆中の特定の酵素反応を促進したためと考えられている.本研究では,膜構造を破壊可能な凍結解凍処理によっても,大豆中にγ-アミノ酪酸が高濃度に蓄積可能であるかを実験的に明らかにすることを目的とした.凍結解凍処理を施した吸水大豆の内部構造を誘電特性計測および電子顕微鏡で評価し,保存後のγ-アミノ酪酸およびpHを測定した.その結果,高圧処理による大豆内部構造の破壊によって,γ-アミノ酪酸濃度が増加したことが示唆された.また,このγ-アミノ酪酸の増加は,大豆内のpHが低下しγ-アミノ酪酸生成酵素の至適pHに近づいたことにより,みかけの酵素活性が増加したことによるものと推察された.

技術論文
  • 堂本 隆史, 神津 博幸, 中村 昌則, 小林 功, 市川 創作
    2019 年 20 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    近年,胃内で気泡含有ゲルを形成し膨張することにより,少ない摂取カロリーで空腹感を抑制できる飲料が開発された.この飲料の空腹感抑制効果を高めるには,胃壁をより大きく,長い時間伸展させるように,大きな体積の気泡含有ゲルを形成し保持できる飲料の最適な作製条件を明らかにすることが重要である.そこで,in vitroで胃における食品の消化挙動を評価できる胃消化シミュレーターを使用し,気泡含有ゲルの体積やその保持能に影響する因子を評価した.その結果,ペクチンのエステル化度やクエン酸濃度が胃液との反応直後のゲル体積に影響することがわかった.また,アミド化度やゲル物性がゲル体積の保持能に影響することがわかった.気泡含有ゲルの体積を最大化させ体積保持能を高めるためには,ペクチンのエステル化度やアミド化度,製剤中のクエン酸濃度を考慮する必要がある.

  • Ramya RAMASWAMY, Raja PRABU RAMACHANDRAN, V. GOWRISREE
    2019 年 20 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    Pulsed Electric Field (PEF) treatment is considered as nonthermal due to application of ultra short high voltage pulses in liquid foods to extend their shelf life. In today’s world, water decontamination becomes extremely necessary to safeguard people from health ailments. The objective of this work focusses on inactivation of naturally prevailing Escherichia coli and Fecal coliform bacteria in environmental water using titanium electrodes. In this study, the PEF treatment chamber was designed to be used for both static and continuous modes of treatment. Bipolar square wave pulses having 1μs pulse width at a rise time of 160 ns and pulse repetition frequency between 48 to 50 Hz were used in this research. From the results, it was observed that titanium effectively inactivated both the microorganisms at a minimum treatment time of 60 seconds at 33.9°C while conventional stainless steel required 120 seconds at a temperature of 40.1°C under the same experimental conditions. Also, the relationship between treatment time and temperature remained linear despite the change in electric field. Results confirmed that (i) Titanium is more suitable in PEF for water decontamination due to its high reactivity than stainless steel (ii) Using titanium, complete ABSENCE of the two microorganisms could be possible in water at a nominal field strength of 24 kV/cm with much less temperature requirement.

  • 守田 愛梨
    2019 年 20 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2019/06/15
    公開日: 2019/06/29
    ジャーナル フリー

    だしを添加したゼリーについて物性計測と官能評価を実施し,その品質評価について統計的解析手法を用いて検討した.5種のゼリーについて,テクスチャー試験による粘弾性計測と女子大生による官能評価を行い,物性3項目の計測値とおいしさ評価スコアとともに計6項目の評価スコアを得た.偏相関分析において,官能評価のおいしさ,ゼリーのかたさ,だしの香りの強さおよびだしの味の強さの間に高い相関があることがわかった.線形関係と仮定したおいしさ評価スコアと官能評価による品質特性スコア間の相互関連性をPartial Least Square (PLS) 回帰分析により探索し,R2=0.99を示す回帰式を得た.Variable Importance in Projection (VIP) 値の順位から,ゼリーのおいしさには食感に関連する項目よりも,味や香りに関する項目の方が高い寄与度を示すことがわかった.しかし,非線形関係にあるデータセットの評価には,非線形関係を柔軟にモデル化可能なPLS回帰分析以外の統計解析手法を適用する必要があると考えられた.

feedback
Top