日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
解説
濃縮ペーストルウ技術の開発を起点とした新たなペースト調味料領域の開拓
濱洲 紘介里見 茂樹平井 弘子川向 通江増子 瞳南 可奈子山本 晴菜黒部 史明森下 泰
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 22 巻 3 号 p. 61-66

詳細
抄録

水系ペースト原料の風味は,従来からある固形ルウ食品では濃縮工程により,レトルト食品では高温での殺菌工程により,維持することが難しい.一方,濃縮ペースト食品では,殺菌条件がレトルト食品より穏やかであるため,水系ペースト原料の風味を維持できるが,部分糊化による物性変化が起きてしまうため,澱粉は調理時に十分なとろみを出せる量を加えられなかった.我々は,水系ペースト原料と必要量の澱粉からなるペースト食品にデキストリンを添加することで,澱粉の糊化温度を高め,低温殺菌時に澱粉の部分糊化を抑制することに成功した.この技術を利用して十分量の澱粉を加えた濃縮ペーストルウ食品は,消費者による調理時において,ルウを容器から絞り出しやすく,加水加熱による澱粉の粘度発現が十分であった.この技術は,調理用カレーの他に,従来成し得なかった新鮮な風味をもつペースト調味食品の市場の開拓に貢献している.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本食品工学会
次の記事
feedback
Top