日本食品工学会誌
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原著論文
Bacillus amyloliquefaciens胞子の乾燥魚粉からの分離と超高温極短時間殺菌装置における熱死滅
附野 翔平坂元 仁朝田 良子井上 周子平田 利雄狩山 昌弘土戸 哲明
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2022 年 23 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

粉粒体食品の殺菌のために近年開発された湿熱超高温極短時間殺菌装置の殺菌性能について検討した.この殺菌装置では,粉体を高速流の飽和蒸気によって超高温で極短時間加熱処理後,この殺菌機が装備する特殊ノズル通過時に急速減圧して急冷する.粉末食品として細菌汚染が顕著な乾燥魚粉(炒り子)を選び,その粉末から3種の胞子形成細菌を分離した.これらの菌は,中温性のBacillus subtilisおよびBacillus amyloliquefaciens,好熱性のGeobacillus stearothermophilusと同定されたが,製品が常温流通されること,中温性ながら高い耐熱性をもつこと,汚染数が特に多いことから,B. amyloliquefaciens胞子を制御対象危害菌に設定した.ラボ試験によって本菌胞子の測定可能な低温加熱温度域で熱死滅特性値であるD値とz値を求め,その結果をもとにより高温での処理後の生残数を予測した.一方,この装置を用い,上記魚粉食品を140,150,160℃の各温度で0.16秒間処理して生残数を調べた結果,いずれの温度でも中温性細菌胞子数は予測値をかなり下回り,その有効性が示唆された.また,より高温の216.2℃で0.2秒間処理後でも魚粉の外観にほとんど変化はなく,色変化もL*a*b*評価によりΔE値は2以下と軽微であったことから,品質劣化が少ない点でも優れていることが示された.

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© 2022 一般社団法人 日本食品工学会
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