日本食品工学会誌
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技術論文
米粉混合パンへの白糠の利用
乾 良充堀場 文二丸山 裕慎野村 由司彦山﨑 栄次
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2022 年 23 巻 4 号 p. 141-148

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抄録

本研究では,酒造用米の精米で発生する白糠の有効利用を目的に,米粉混合パンへの応用を検討した.基本配合は小麦粉の20%を米粉で置換したものとし,白糠置換パンは米粉の半分および全部を白糠で置換して調製した.白糠の澱粉の損傷度は52.8%であった.パン生地の発酵に伴う体積増加及びパンの比容積は,白糠の置換割合の増加に対して減少する傾向がみられたが,パン生地に求められる性能は満たした.白糠置換パンのクラムには,小麦粉の内在性のβ-アミラーゼが損傷澱粉を分解して生成したと考えられるマルトースが蓄積した.白糠置換米粉パンのクラムは,72時間貯蔵した場合であっても水分保持力が高く,また,硬くなりにくかった.白糠置換米粉パンのクラムの官能試験は,各種機器測定試験に対応する結果になるとともに,白糠置換割合が増加するほどより甘く感じることがわかった.これらの結果から,白糠から生じたマルトースは,澱粉の老化を抑制するのに加え,クラムの水分の損失を防ぎ,パンの老化を遅らせたと考えられる.今後,より詳細な実験が必要と考えられるが,白糠は米粉混合パンの原料として有望かつ興味深い素材であると考えられる.

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© 2022 一般社団法人 日本食品工学会
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