2022 年 23 巻 4 号 p. 131-137
本研究では,還元水飴(HSH)溶液における水分活性(aw),アルブミン変性温度(ADT),および自由水の分子間水素結合密度(Doh(w-s))の相関を示した.まず,分子量(MW)が既知の糖類の浸透圧(c)を測定したところ,1/cとMWとの間に有意な線形関係があることが明らかとなった(r2=0.998, P<0.0001).次に,この関係から推定したMWとガラス転移温度を用いてDoh(w-s)を算出し,Doh(w-s)とaw,およびDoh(w-s)とADTとの関係を評価した.線形回帰分析の結果,Doh(w-s)とawの間には有意な正の線形関係があり(r2>0.900, P<0.0001),Doh(w-s)とADTの間には有意な負の線形関係が見られた(r2>0.900, P<0.0001).また,これらの式から,HSH溶液のADTは測定が容易なawを用いて推定できること,実測値と推定値のSpearman相関は有意であることが明らかとなった(r2=0.930, P=0.00280).これらの結果は,任意の糖組成からなる任意の濃度の各種HSH溶液のADTを,そのaw値を測定することにより推定できることを示唆している.