2023 年 24 巻 1 号 p. 19-28
フィコビリタンパク質(PB)はシアノバクテリアが生成するタンパク質であり,発がん性などの効果から医薬品としての機能が研究されている.本研究では,イシクラゲ(Nostoc commune)由来のPBを分離・回収するために,分画分子量の異なる限外濾過膜モジュール(150 kDa, 30 kDa and 10 kDa)を用いた.0.07 MPaで10 kDaの分子量分画のUF膜モジュールに,N. communeから得られたPB含有溶液を通液したところ,30分で10倍の濃縮率となった.スケールアップ時のUF膜モジュールによるPBの濃縮を予測するために,UF膜モジュールの孔表面で形成されるケーク層におけるタンパク質の透過に関する常微分方程式を立式して実験値にフィッティングし,パラメータを得た.そして,パラメータを用いて常微分方程式を計算したところ,150 kDaの分画分子量のUF膜モジュールの場合,100 LのPB含有溶液を10倍濃縮するために,15時間必要であることが明らかになった.計算の結果,30 kDaの分画分子量のUF膜モジュールの場合が,最も高いPBの生産性を示すことが明らかになった.