日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
24 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
解説
  • 五十部 誠一郎
    2023 年 24 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    食品加工技術の中には,異分野での技術シーズを導入して開発,普及したものも少なくない.これらの食品加工技術の開発の大きな駆動力は新たな食品を求める実需者ニーズである.ここでは,社会状況によって変化する様々な実需者ニーズに対応して,高品質,さらに高付加価値の食品を開発,実用化の事例を紹介する.1つ目は2軸エクストルーダーを用いた食品加工技術(組織化のメカニズムの解析,射出成形法による汎用的な高水分組織化素材,特定者用食品素材化,代替肉素材製造など)である.2つ目は,2軸スクリュー系装置による環境保全型の農産物加工技術(効率的な搾油や脱水などの固液分離処理,射出成形処理による生分解性素材化など)である.そして3つ目は,アクアガス加工技術(過熱水蒸気に微細水滴を含有する加熱媒体による病院食などを想定した高品質農産物処理など)についてであり,それぞれの開発の進め方やニーズへの対応を含めて,解説した.

  • 木原 康博, 木原 利昌, 木原 功一朗, 有馬 秀幸, 山本 修一
    2023 年 24 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    野菜などの食品乾燥の品質と効率を考慮した最適乾燥条件の迅速決定方法を確立するために,画像情報を含む各種オンラインモニタリングデバイスを実装した乾燥装置を開発した.はじめに,デジタルカメラ,温湿度センサー,電子天秤を搭載した連続測定が可能な実験室レベルの小型乾燥装置を製作し,この装置を基に,センサーとサンプルポートを装備した小型の試験研究用棚段乾燥装置を作製した.モデル食品の乾燥過程の画像をオンラインで撮影するとともに,サンプルポートからサンプリングした試料の遊離アミノ酸濃度を測定したところ材料温度が上昇する乾燥後期で減少し,同時に乾燥試料表面の変色(褐変)が生じていた.材料の画像と材料温度のモニタリングから重要な情報を得ることができる可能性とメカニステイックモデルシミュレーションは最適乾燥プログラムの設定に有用であることが示唆された.

原著論文
  • 日種 隆敬, 出村 幹英, 森貞 真太郎, 大渡 啓介, 川喜田 英孝
    2023 年 24 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/31
    [早期公開] 公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    フィコビリタンパク質(PB)はシアノバクテリアが生成するタンパク質であり,発がん性などの効果から医薬品としての機能が研究されている.本研究では,イシクラゲ(Nostoc commune)由来のPBを分離・回収するために,分画分子量の異なる限外濾過膜モジュール(150 kDa, 30 kDa and 10 kDa)を用いた.0.07 MPaで10 kDaの分子量分画のUF膜モジュールに,N. communeから得られたPB含有溶液を通液したところ,30分で10倍の濃縮率となった.スケールアップ時のUF膜モジュールによるPBの濃縮を予測するために,UF膜モジュールの孔表面で形成されるケーク層におけるタンパク質の透過に関する常微分方程式を立式して実験値にフィッティングし,パラメータを得た.そして,パラメータを用いて常微分方程式を計算したところ,150 kDaの分画分子量のUF膜モジュールの場合,100 LのPB含有溶液を10倍濃縮するために,15時間必要であることが明らかになった.計算の結果,30 kDaの分画分子量のUF膜モジュールの場合が,最も高いPBの生産性を示すことが明らかになった.

feedback
Top