日本食品工学会誌
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3Dフードプリンティングにおけるノズル混合比の調整による介護食の食感制御
藤原 広希鈴木 悠斗鳥羽 慶小川 純古川 英光橋爪 麻里野路 友也寺谷 鉱伊藤 直行
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論文ID: 24655

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抄録

現代社会における高齢化の進展に伴い,嚥下障害は高齢者ケアの重要な課題となっている.嚥下障害をもつ高齢者には,柔らかく,しっとりとした飲み込みやすい食品の開発が求められている.しかし,現行の嚥下障害食の多くはマッシュ状またはピューレ状であり,その外見が乏しく,食欲をそそらないため,栄養失調のリスクが増大する可能性がある.さらに,介護食を食べる人々には嚥下能力に個人差があり,全員が同じ硬さや食感の食品を必要とするわけではない.このため,各個人の嚥下能力に応じて食品をパーソナライズ化することが重要である.

本研究では,カードランという微生物由来の多糖類を使用した2種類の材料を用い,3Dフードプリンターの混合造形技術を活用して,硬さが異なる食品を作成した.具体的には,材料の混合比率を調整することで,介護食の分類の中でも5つの異なる硬さの食品を造形し,同一の食品内で硬さが場所によって異なるグラデーション造形を行った.この作成法により,食べる部位によって異なる食感を楽しめる食品を作成し,嚥下障害者の個別のニーズにより細かく対応することを目指した.

粘弾性特性の評価では,線形粘弾性領域(LVR)により,2つのインクの線形限界が1%未満であった (Fig. 2 (a)).LVR内では,ひずみが小さすぎてインクの物理的構造に影響を与えない.この線形領域では,ひずみは材料の物理的構造に影響を与えることがないほど小さく,貯蔵弾性率は損失弾性率よりも高くなった.しかし,LVRを越えると,材料の変形により貯蔵弾性率と損失弾性率の大幅な減少が引き起こされた.損失弾性率が貯蔵弾性率を上回る場合,フードインクは弾性的な力よりも粘性的な力が支配的になり,液体的な挙動を示した.また,3.6 wt%のインクは4.3 wt%のインクに比べて粘度が低く,相対的に動的構造を示した (Fig. 2 (b), Table 3).4.3 wt%のインクは,より固体のような挙動を示し,形状保持能力が高い一方で,エネルギーの散逸が多く,せん断変形に対して粘性が高かった.対照的に,3.6 wt%のインクは,より流動的で形状保持能力が低いことが示された.

テクスチャー試験(TPA)では,3.6 wt%のインクが4.3 wt%のインクよりも応力が低く,低い質量パーセンテージのカードランによって形成されたため,応力の変動が少ないことが示された (Fig. 3 (a), Table 3).一方,4.3 wt%のインクは,ネットワークの強化により,硬さの変動が大きく,ひずみに対する硬さの増加が顕著であった.加熱後のサンプルを5つの異なる混合比(①0.00:1.00,②0.25:0.75,③0.50:0.50,④0.75:0.25,⑤1.00:0.00)で造形し,破断試験を行った (Fig. 4).混合比の調整により,応力が変化し,特に4.3 wt%のインクの割合が増加するにつれて応力が増加した (Fig. 3 (d)).本研究の手法により,患者の嚥下能力や食事の状況に応じて,食事のテクスチャーを柔軟に調整することが可能であることが示された.

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