日本食品工学会誌
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食品ゴミ: R. oryzaeによるL-乳酸発酵のための新しい基質
プラニートラッタナノン スタシニー脇坂 港白井 義人キップリーシャワニット ヴィチェン
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2005 年 6 巻 1 号 p. 45-52

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抄録

食品ゴミを基質として, Rhizopus oryzae KPS106株を用いた, 高濃度ならびに高純度のL (+) -乳酸生産について検討した.食品ゴミに, 種々の前処理 (糖化, 自然沈降, 凍結融解, 遠心分離, イオン排除クロマトグラフィー) を施して, 培地として利用できるように調製した.食品ゴミ糖化液中, 全糖比98.51%はグルコースであった.食品ゴミ糖化液から懸濁固形分 (SS) を除去するには, 凍結融解法が有効であり, 55%のSSが除去された.その後, イオン排除クロマトグラフィーを経て, 食品ゴミ糖化液から精製した糖を, R.oryzae KPS106株による乳酸発酵の基質に用いた.生ゴミ培地中の糖を炭素源として, 振とう培養 (100rpm, 35℃, 72時間) を行ったところ, 初期全糖濃度に基づく乳酸収率は, 食品ゴミ由来の培地で63.9±1.8%であった.食品ゴミ糖化液から分離精製した糖は, 合成培地のグルコースと同様に資化された.また, 微量の無機成分の添加が, 糖消費と乳酸生成を促進した.さらに, 生成したL (+) -乳酸の光学純度は, 98.7±1.8%であった.以上の結果から, 食品ゴミは, 生物的変換により乳酸のような有価物を製造する有望な再生可能資源であることが示唆された.均質な廃棄物を原料とするR.oryzaeによる乳酸生産は, これまでにも数多く報告されているが, 食品ゴミの様に, 雑多な成分の含まれるものを基質とする研究は, 本報告が初めてである.

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