2008 年 25 巻 2 号 p. 89-97
Vibrio vulnificus 感染症に関する基礎的研究の一環として感染経路や感染源を解明するため,今回は市販海産魚類の本菌の汚染状況,血清型別および各種抗菌剤の薬剤感受性試験を行ったところ,以下の成績が得られた.
1. 新鮮魚1049例について本菌の分離を試みたところ,57例(5.4%)から本菌が分離された.
2. 産地別における分離状況は,鳥取県が157例中1例(0.6%),徳島県が154例中21例(13.6%),愛媛県が90例中26例(28.9%),神奈川県が443例中9例(2.0%)からそれぞれ本菌が分離され,徳島県と愛媛県が高い分離率を示し,産地間の差異が認められた.
3. 魚種別では,アジ613例中53例(8.6%),イワシ191例中4例(2.1%)およびカマス27例中1例(3.7%)からそれぞれ本菌が分離された.
4. 検査部位別では内蔵14例(1.3%),エラ18例(1.7%)および体表26例(2.5%)からそれぞれ本菌が分離された.
5. 血清型別状況では,供試した58株中32株(55.2%)が9菌型に型別され,O22が19.0% と最も多く,次にO4が10.3% などであった.
6. 薬剤感受性試験結果をMIC90値で比較すると,GM, EM, TC, DOXY, MINO, CP, NAおよびCPFXに対して全株が感受性を示したが,ABPC, PIPC, CER, CET, CPZ, CTX, CMZ, LMOX, MEPM, CTX, KMA, MKおよびLCMに対しては耐性株が認められた.