食品と微生物
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食中毒検査での原因菌究明率向上への供試材料側の必要条件
小川 博美福田 伸治門田 達尚
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1993 年 10 巻 3 号 p. 147-153

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抄録

1982年から1991年の間に, 広島県で発生した集団食中毒123事例における4, 551検体の検査結果を用いて, 原因判明の有無が供試検体の種類, 供試数やその採取条件とどのように関連しているかについて3方法により検討した.
分離率比較法では, 原因菌分離率は全試料において26.9% (1, 009/3, 754) であり, 試料別には患者便60.5%, 食べ残し41.0%, 吐物34.6%, 調理者便22.7%, 検食12.7%, 食品原料11.7%であった.
採点評価法では判明群で平均6.59点, 不明群では平均5.39点で両者に有意差(p<0.01)が認められた.また, 評点7以上 (60事例) での究明率は88.3%で, 6点以下の58.7%より有意 (p<0.01) に高い比率を示した.
多重ロジスティック・モデル法でのオッズ比は, 患者材料19.6 (95%信頼区間=4.36-88.48), 調理者材料7.9 (1.25-49.82), 発生季節4.7 (1.66-12.99) を示した.
以上の結果から (1) 患者便6~10検体の確保, (2) 3~5病日内での検体採取, (3) 検食5検体確保, (4) 調理者便確保の条件が満たされれば食中毒事例の約90%が原因物質究明可能と考えられた.

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