食品と微生物
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ケナガコナダニの食菌性と真菌伝播能
諸角 聖吉川 翠和宇慶 朝昭一言 広
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1987 年 4 巻 2 号 p. 133-141

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抄録

ケナガコナダニの食菌性と真菌伝播能を明らかにする目的で, 32菌種の真菌を用いてその培養中におおる増殖および真菌摂食後の体表, 体内および糞中における生菌数を調査し, 以下の結論を得た.
1. 各種真菌培養中におけるケナガコナダニの増殖はAspergillus flavus. A. versicolor, Penicillium frequentansなど29菌種で認められ, この内Acremonium sp., P. frequentansおよびPhoma sp. の3菌種においてはいずれも培養30日後に1,000匹/試験管以上とダニの旺盛な増殖が認められた. この点から, これらの菌はいずれもケナガコナダニの良好な増殖基質となることが明かとなった. これに対して, Aspergillus awamoriの集落中でダニの増殖はみられず, Eurotium herbariorumおよびChaetomium sp. の2菌種においてもわずかなダニの増殖が認められたにすぎなかったことから, これらはケナガコナダニの増殖基質となり難いことが判明した.
2. 真菌を摂食したケナガコナダニの体表における生菌の付着は31菌種において認められ, Penicillium islandicum, Phoma sp. など9菌種においてはダニ1匹当り1,000cfu以上の多数の菌の付着が認められた.
3. また, ダニ体内における生存は21菌種で認められ, Paecilomyces variotii, Penicillium citrinumなど5菌種を摂食した場合の生菌数は多い傾向を示した. また, ダニ体内で生菌の認められなかった菌種はAlternaria alternata, Wallemia sebiなど11菌種であった.
4. ダニに摂食された真菌が生きたまま糞中に排せつされるか否か, 糞5個を採取して検討した. その結果, Penicillium citrinum, P. islandicum, P. verrucosum var. cyclopium, P. verrucosum var. verrucosum, Trichoderma virideなど16菌種が生存したまま糞中に排泄され, 糞を介しても伝播可能であることが明かとなった.
5. Aspergillus flavusの増殖とaflatoxin産生に及ぼすケナガコナダニの影響を, 4段階の湿度条件に置いたコーングリッツを用いて検討した結果, A. flavusのaflatoxin B1産生量はダニを接種しなかった群に比べ低い値を示した.

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