抄録
各種の食品試料や培地中で産生されたボッリヌス毒素に対して加熱試験を行い, 熱安定性に関与するいくつかの因子についても検討した. 肉類や培地中で産生された毒素が易熱性であったのに対し, 野菜の方で熱安定性は高かった. とくに, サヤインゲン中でのB型 (Okra株) 毒素は80℃, 30分の加熱でも完全には不活化されず, 毒性の失活には90℃, 10分の処理を必要とした. この場合, 菌体を含まない遠心上清部分の熱安定性は低かった. 精製B型毒素を用いた試験でサヤインゲン抽出液は熱に対して多少の保護効果を示した. さらに, A型毒素は低いpHで熱安定性は高かったが, B型毒素ではその影響は小さかった. また, ボッリヌス毒素の型や分子サイズによる熱安定性の差はとくにみられなかった.