日本食品微生物学会雑誌
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大分県内の飲用温泉水に関する細菌学的検討
渕 祐一緒方 喜久代成松 浩志阿部 義昭樋田 俊英帆足 喜久雄牧野 芳大
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1999 年 16 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

1995年7月から1998年10月にかけて大分県内で採水された温泉90検体を用いて, 細菌学的検査を中心に飲用泉の衛生状況を検討した.飲用利用の衛生管理基準の細菌検査による不適率は33.3%で, これにKMnO4消費量の結果をあわせたときの不適率は43.3%であった.項目別の不適率は一般細菌数で25.6%, 大腸菌群で10.0%, KMnO4消費量で13.3%を示した.
衛生管理基準と温泉分類との関係から, 細菌検査による不適は泉温が低く, 中性~ 弱アルカリ性の温泉に多い傾向がみられた.泉質との関係では, アルカリ性単純温泉には大腸菌群による不適がなかった.外観との関係では着色や混濁のある温泉で細菌検査による不適が多い傾向がみられ, 化学成分との関係では大腸菌群を検出した温泉はヒ素およびフッ素の平均濃度が低かった.
他方, KMnO4消費量は泉温やpHが高い温泉ほど, また着色した温泉やフッ素濃度の高い温泉で, 高値を示す傾向がみられた.衛生管理基準に適合した温泉のうち, 実際に飲用泉の利用施設に登録されたのは約半数であった.
本調査結果から, 大分県内の飲用泉施設について微生物学的衛生管理をさらに徹底するとともに, 利用者には飲用に当たっての適正な指導と衛生知識の啓発が重要と考えられた.

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