2015 年 79 巻 3 号 p. 141-148
宗谷岬沖潮流カレンダーは2009年から北海道宗谷地区で配布され,ミズダコ樽流し漁業で活用されている.本研究では,本カレンダーで用いている「樽流しに適した表層流速度」を検証し,同時に本カレンダーの導入による漁業活動の変化を明らかにすることを目的とした.宗谷地区の短波海洋レーダの観測値と樽流し漁業の1日あたり1隻あたり漁獲量を用いた回帰樹解析の結果,宗谷岬沖の海域において0.1–1.0ktの表層流の発生時間が長くなれば操業時間も長くなり,漁獲量も増加した.2007年の表層流速は,2003–2006年のレーダのデータから推定した潮汐流と平均流をもとに推定し,この予測値と2007年の実測値の間の相関係数は0.79を示した.樽流し出漁日数が年間100日以上と50日以上の漁業者の出漁日数は,カレンダー導入後減少し,樽流しに適さない日に出漁しなくなったものと推定した.