水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
79 巻, 3 号
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原著論文
  • 曽根 亮太, 蒲原 聡, 山田 智, 鈴木 輝明, 高倍 昭洋
    2015 年79 巻3 号 p. 117-129
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
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    アサリ稚貝が大量に発生する三河湾豊川河口の六条潟においてボックスモデルにより物質収支計算を行い,水質浄化機能を評価した.また,稚貝の生息状況を把握し,窒素循環機構について考察した.収支計算の結果,干潟海域においてPONで-18.5mgN・m-2・h-1(消失),またDTNで6.3mgN・m-2・h-1(生成)となり,結果的にTNとして-12.2mgN・m-2・h-1(消失)であった.他の干潟域と比較するとPONおよびTNの除去機能が高かった.六条潟の窒素循環機構については,高密度に生息する稚貝による懸濁物除去機能が高く,さらには稚貝の転換効率が高いために溶存態としての回帰が少なくなっていると考えられた.また,干潟域で生成された溶存態窒素は大型藻類や底生微細藻類によって速やかに吸収されており,六条潟は懸濁物のみならず総窒素の除去機能も高かった.今後は内湾生態系の回復へ向けて,基礎生産が高く,時に赤潮の発生により有機物負荷が増大する河口域において生物生産機能の高い干潟域の再生を進める必要がある.

  • 藤原 秀一, 毛塚 大輔, 石水 秀延, 田端 重夫, 野島 哲
    2015 年79 巻3 号 p. 130-140
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
    ジャーナル フリー

    琉球列島南部,石垣島と西表島の間に位置する石西礁湖における造礁サンゴ,ミドリイシ属の一斉産卵の正確な時期を把握するため,産卵,浮遊する受精卵の帯状集合(スリック)の観察日と満月からの経過日数との関係,及び観察日の積算水温,積算日射量を検討した.産卵は,5月の満月の3日前–2日後に多く観察された.ほとんどの産卵は,日没後1–4時間,また,満潮の1時間前–4.5時間後に起こった.すべての産卵は,5月に日平均水温が26°Cを超えると起こり,それは水温極値の2–3ヶ月前にあたった.一斉産卵の条件は,積算水温が1.2×103°C以上,積算日射量が0.6×103MJ·m-2以上と推定され,最も起こりやすい時期は5月の満月の夜及び満月付近の夜である.

  • 佐野 稔, 坂東 忠男, 本前 伸一, 江淵 直人
    2015 年79 巻3 号 p. 141-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/07/19
    ジャーナル フリー

    宗谷岬沖潮流カレンダーは2009年から北海道宗谷地区で配布され,ミズダコ樽流し漁業で活用されている.本研究では,本カレンダーで用いている「樽流しに適した表層流速度」を検証し,同時に本カレンダーの導入による漁業活動の変化を明らかにすることを目的とした.宗谷地区の短波海洋レーダの観測値と樽流し漁業の1日あたり1隻あたり漁獲量を用いた回帰樹解析の結果,宗谷岬沖の海域において0.1–1.0ktの表層流の発生時間が長くなれば操業時間も長くなり,漁獲量も増加した.2007年の表層流速は,2003–2006年のレーダのデータから推定した潮汐流と平均流をもとに推定し,この予測値と2007年の実測値の間の相関係数は0.79を示した.樽流し出漁日数が年間100日以上と50日以上の漁業者の出漁日数は,カレンダー導入後減少し,樽流しに適さない日に出漁しなくなったものと推定した.

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