水産海洋研究
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Print ISSN : 0916-1562
原著論文
ドロクイ属仔稚魚の成長に伴う移動:内湾に依存した初期生活史
上原 匡人 立原 一憲
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2016 年 80 巻 4 号 p. 289-301

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抄録

本研究では,沖縄海域で漁獲されるドロクイ属2種(Nematalosa japonica and N. come)について,仔稚魚の出現様式,成長,骨格系の発達,食性を明らかにした.両種の孵化仔魚は,はじめ湾内の沖合に分布し,尾鰭による推進力の獲得に伴い孵化後10日,体長10 mmで波打ち際に接岸した.接岸場所としては,砂質干潟が選択され,主にカイアシ類を摂餌して成長し,変態期仔魚に相当する孵化後30日,15 mmで泥質干潟へ移動した.このとき,効率的な推進力や操縦性の向上など高い遊泳能力を有し,能動的に移動していると考えられた.移動後も,主にカイアシ類を摂餌し,22 mmからデトリタス食へ食性を変化させた.両種は,泥質干潟と近隣の浅海域で成長を続け,孵化後1年で約100 mmに達した.このように,両種にとって浅海域,特に干潟域が,ごく初期の成育場として極めて重要であり,近年の人為的な干潟域環境の消失は,両種の成育場を消失させることになると考えられた.両種の健全な個体群を維持していくために,沿岸浅海域の保全が不可欠である.

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© 2016 一般社団法人 水産海洋学会
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