三河湾の小型底びき網漁場におけるバカガイの資源管理のため,2017年2月から2018年2月にかけて採集された個体の成熟年周期と殻長組成を調査した.成熟個体は主に4月から7月に得られた.生殖腺は8月以降退行し始め,11月から翌2月に得られた個体の大部分が回復期の段階にあった.これらの結果から三河湾におけるバカガイの産卵期は4月から7月であると考えられた.殻長組成に基づくコホート分析の結果,2017年2月から5月に得られた個体は,大部分が漁獲可能サイズの殻長40 mmを超えていたが,9月には殻長30 mm未満の新規個体群の加入が認められた.新規個体群の割合は9月から11月にかけて増加した.新規個体群は急激な成長を示し,2018年2月には大部分が漁獲可能サイズに達した.これらの結果から,春から初夏にかけて着底したバカガイ初期稚貝は,1年以内に漁獲可能サイズに達すると考えられた.