瀬戸内海における底質環境の変遷を把握するために,環境省が2016年7月に中西部135地点より採取した0–5 cm層堆積物の全有機態炭素量(TOC),全窒素量(TN)および炭素,窒素安定同位体比(δ13C, δ15N)を分析し,C:N比および同省による6項目(泥分率,強熱減量,化学的酸素要求量,全リン量,酸化還元電位,酸揮発性硫化物態イオウ量)の分析結果を加えて主成分分析を行った.当水域は泥質で有機物量が多いA区,砂質で有機物量が少ないB区,δ13C, δ15Nが低く,海岸近くのC1区,沖合のC2区に4区分された.C1区では陸起源有機物の割合が高かった(37%)が,C2区では低いC:N比(5.4)より陸起源有機物は少ないと判断した.1980年代以降の環境省による3回の調査結果と比較し,広島湾のA区のみTOCとTNの有意な減少を認めた.