2020 年 84 巻 4 号 p. 271-284
マサバScomber japonicus は北西太平洋で最も商業利用されている魚類の1種である.本研究では1995–2017年のデータを用いて東北近海におけるマサバのまき網漁業による漁獲データと海洋条件との関係を調べた.海面温度と漁場の分布には大きな年変動があり,水温変動はマサバの漁場の形成に大きな影響を与えていた.例えば,春季に親潮前線が南偏(北偏)した場合,春季の三陸南部は低(高)水温になり,この影響を受けて春季から秋季にかけて三陸における漁場は相対的に南部(北部)に形成される.この結果は,漁期が開始されるまでの海洋条件がマサバの主要漁場海域を予測するよい指標となることを示している.