丹後半島沿岸の定置網4漁場において,2015年から2016年に2層(10 m深および30 m深)で流向および流速を測定し,急潮被害発生時の流況を検証した.すべての漁場において,平均流速は10 m深の方が30 m深よりも速く,急潮発生日数は多かった.しかし,7つの被害事例のうち,10 m深のみの急潮で被害が発生したのは1事例であるのに対し,30 m深のみの急潮による被害は3件発生した.また,7事例のうち5事例で,被害発生期間中の最大流速は30 m深の方が速かった.急潮被害の防止や被害時の流況把握において,30 m深の流況に着目することが必要不可欠であると考えられる.また,漁場ごとに急潮発生水深の特徴が見られたことから,今後,海域ごとの特性を踏まえて複数層の流況予測をチェックすることで,「急潮情報」の高精度化につながることが期待される.