丹後半島沿岸の定置網4漁場において,2015年から2016年に2層(10 m深および30 m深)で流向および流速を測定し,急潮被害発生時の流況を検証した.すべての漁場において,平均流速は10 m深の方が30 m深よりも速く,急潮発生日数は多かった.しかし,7つの被害事例のうち,10 m深のみの急潮で被害が発生したのは1事例であるのに対し,30 m深のみの急潮による被害は3件発生した.また,7事例のうち5事例で,被害発生期間中の最大流速は30 m深の方が速かった.急潮被害の防止や被害時の流況把握において,30 m深の流況に着目することが必要不可欠であると考えられる.また,漁場ごとに急潮発生水深の特徴が見られたことから,今後,海域ごとの特性を踏まえて複数層の流況予測をチェックすることで,「急潮情報」の高精度化につながることが期待される.
マサバScomber japonicus は北西太平洋で最も商業利用されている魚類の1種である.本研究では1995–2017年のデータを用いて東北近海におけるマサバのまき網漁業による漁獲データと海洋条件との関係を調べた.海面温度と漁場の分布には大きな年変動があり,水温変動はマサバの漁場の形成に大きな影響を与えていた.例えば,春季に親潮前線が南偏(北偏)した場合,春季の三陸南部は低(高)水温になり,この影響を受けて春季から秋季にかけて三陸における漁場は相対的に南部(北部)に形成される.この結果は,漁期が開始されるまでの海洋条件がマサバの主要漁場海域を予測するよい指標となることを示している.
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