水産海洋研究
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Print ISSN : 0916-1562
原著
由良川出水に起因する若狭湾の急潮
熊木 豊 広瀬 直毅井桁 庸介兼田 淳史鮎川 航太上野 陽一郎
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2021 年 85 巻 2 号 p. 54-68

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抄録

若狭湾では気象擾乱や対馬暖流の接岸に起因する急潮が発生し,湾内の定置網をしばしば損壊させる.定置網の急潮被害は湾口部で多いが,台風1102号通過後には湾奥部で集中的に被災した.この特異的な急潮の発生機構解明に向けて,若狭湾を計算領域とする水平格子間隔500 mの高解像度海洋循環モデルを構築した.本モデルに台風1102号通過に関連した強風や由良川出水等の効果を入力すると,台風通過後の半日から1日半程度の間に岸沖方向10 km未満および鉛直方向約10 mの規模を有し,湾奥西部から岸を右にみて湾奥表層を東進する最大流速約1 m·s−1の急潮が確かめられた.また,台風接近にともなう北東風の連吹時には湾奥西部の海面高度が上昇し,この高水位域が台風通過後に湾奥を東進する状況も認められた.ただし,本モデルに台風による強風または出水の一方の効果だけを入力した場合の湾奥部の最大流速はいずれも0.5 m·s−1未満と試算され,同海域の急潮は再現できなかった.よって,由良川出水による大量の淡水が台風接近時の強い北東風により湾奥部西側に堆積して海水の水平圧力勾配が形成され,台風通過後の風向変化をきっかけにこの圧力勾配が解消される過程で急潮が発生したと推察された.

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© 2021 一般社団法人 水産海洋学会
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