2008年,水温が21~26°Cに低下する冬期に,沖縄県内のヤイトハタ養殖場で粘液胞子虫性やせ病が発生した。病魚は著しいやせ症,緑肝および腸管壁の薄化を呈し,累積死亡率は20~50%に達した。形態観察と遺伝子解析により病原体はEnteromyxum leeiであることが示された。E. leeiは病魚の腸管と胆管の上皮に重篤に寄生しており,それに伴う上皮の剥離や激しい炎症が観察された。崩壊した組織と細菌が胆管を閉塞し胆汁の分泌が阻害された結果,肝臓内に胆汁色素がうっ滞し緑肝が生じたと考えられた。生残魚は高水温期(27~30°C)に症状が軽減し,E. leeiが検出されなくなった。病魚との同居ないし病魚の糞の経口投与により,魚から魚への水平感染が成立した。